2022年2月26日(土)15:00-17:00 「幸せめぐる まちづくりの未来」〜都市から郊外、里山へ〜
神奈川の里山(相模原市緑区藤野地域)で新しい生き方・暮らしの可能性を実証実験している森ラボで、まちづくりに従事してこられた、東急執行役員東浦さんと相模原市副市長森さんをお招きしてのトークセッションです。
登壇者:東浦亮典(東急株式会社 執行役員 沿線生活創造事業ユニット・フューチャー・デザイン・ラボ管掌) 1985年、東京急行電鉄(現・東急)入社。自由が丘駅駅員、都市開発部門、東急総合研究所などを経て商業施設開発やコンセプト賃貸住宅ブランドの立ち上げなど新規事業を担当。都市創造本部 戦略事業部 事業部長、渋谷開発事業部長などを経て現職。著書として「私鉄3.0」ワニブックスPLUS新書
森多可示(相模原市 副市長)慶應義塾大学法学部卒。相模原市事務員として入庁し、総務課担当課長、都市建設局参事、環境共生部長、市民局長などを歴任。2019年5月より、相模原市副市長。相模原市緑区西部の中山間地域在住
ファシリテーター:高橋靖典(森ラボ コミュニティマネージャー)子どものシュタイナー学園の入学に伴い、藤野へ移住。トランジションタウン活動に参加し、地域通貨よろづ屋事務局や、藤野電力等の活動に携わる。新規事業開発やデジタルソリューションの提供を行うアーキタイプ株式会社代表の他、地域では、一般社団法人藤野エリアマネジメント代表理事、学校法人シュタイナー学園 理事長などを務める。
高橋:みなさん、こんにちは。「幸せめぐるまちづくりの未来」、本日は森ラボで、東急執行役員東浦様と、相模原市副市長の森様をお招きして、このテーマについてトークセッションを行わせていただきます。まず「相模原市の中山間地域のまちづくり」として相模原市副市長の森様から相模原市の取り組みについてお話をいただきたいと思います。
森:みなさんこんにちは。
今、髙橋さんからご紹介いただきました相模原市副市長の森と申します。東浦さんにお会いできましたことを光栄に存じております。今日はよろしくお願いします。
大きく4つの項目に分けて説明をさせていただきます。相模原市緑区について。そして森ラボについて。それから、行政の最近の取り組みについて。また、中山間地域のこれからについて私自身の考えも少し織り交ぜながらご紹介させて頂きたいと思います。
相模原市の規模は、人口72万人、神奈川県の3つある政令指定都市で、横浜、川崎についで3番目になった市です。面積は約329㎢、3つの区に分かれています。南区、中央区、そして今日のテーマとなっている場所、緑区です。
相模原市緑区の交通は、橋本が緑区の中心的な市街地を形成しており、京王相模原線とJR横浜線が入っています。新宿·横浜から約40分。森ラボは藤野という所にありますが、JR中央本線の新宿から約60分という近さになります。
お車でお見えになるとしたら、中央道相模湖インターチェンジもありますので、移動は比較的便利な立地と言えますが、ここは中山間地域に位置しています。平野部から山間地に向かっていく地域で、日本の約7割、人口の7分の1が居住しているのがこういう中山間地域になるという所です。
相模原市緑区の特徴をご説明しておきます。区の東部、橋本駅周辺に広がる市街地には、商業施設や比較的高層の集合住宅、文化施設が集積している。交通の利便性を生かして本市の内陸工業都市としての発展を牽引したところが緑区の東部になりまして、そして緑区の大きな特徴を作っているのが西部、中山間地域です。山林、農地、湖、川、里山など、水源地としての豊かな自然環境、またその豊かな自然環境に囲まれた中での住環境。あとは観光。そしてこの藤野は、現在人口が約8500人程だと思いますが、その実に4パーセントがアーティスト関連ということで、これは全国でも稀に見る集積になると思います。本当に多様な方達が集まっています。
中山間地域では、今後アーティストたちの皆さんが集まり、また、それ以外の様々な方達が集まっているこの場所を、より一層魅力あるものにするにはどうしたらいいか。具体的な話は次のスライドでお話しします。
森ラボは藤野駅から約徒歩3分のテレワーク拠点になります。森のイノベーションラボFUJINOという言い方が正式名称になりますが、基本的なコンセプトとしては、新しい価値を生み出す研究所機能を有する拠点ベースになります。
森ラボ設置の背景は、外的要因としての地方移住への関心が高まってきていることです。コロナを経験した私たちの働き方は大きく変化し、多様な働き方へのニーズが高まっています。内的要因としては中山間地域の人口減少が進み、さらに、高齢化の進行という課題を抱えています。地域特性を最大限活用しながら何ができるかを考えました。都心からの距離や、多様な活動·資源、多様な地域コミュニティが前提として実証運営を行なっています。
森ラボの施設のレイアウトと設備について少しご紹介しておきます。Wi-Fi環境は利用者に支障のないように備えてあります。またパーソナルブースやミーティングルームなどは、テレワークに対応するように作ってあります。コワーキングの利用場所は、木質を多く使い、既存の机·椅子をアップサイクルしました。こちらは、ウッドデザイン賞を2021年度に受賞しました。
森ラボ運営のコンセプトは、SDGs with ARTです。森ラボが個性豊かな地域とつながるハブとなり、イノベーションを生み出すベースになるということです。SDGsに係る活動との調和を図り、アートな視点を持つ、それらを含めて地域内外をつなぐ拠点というのが森ラボの持つコンセプトになっています。
また、コミュニティマネージャー·コミュニティガイドを配置し、市や利用者が共に作りあげる場がとして考え、森ラボ主催のイベントも行っていますし、利用者がプロジェクトを立ち上げることが出来ます。
第一回目は、昨年7月15日に「森林資源の活用」をテーマにイベントを実施しました。これをスタートにして、2021年9月16日には「地域における事業の課題」。2021年12月16日には、この藤野地域を色濃く特徴付けている、「アートと地域コミュニティの関係を探る」、そして、「地域課題とアートで向き合う」といったイベントも実施しています。
現在、動いているプロジェクトは、森の再生プロジェクト、バーチャル実験室、森の家づくりプロジェクト、農業再生プロジェクト、この4つが現在活動しています。(https://morilab-fujino.jp/category/project/)
ここで触れておきたいのは、中山間地域に設けられた森ラボは、共生の実践に向けたハブの役割を果たすということです。緑区内にある中山間地域が、多くの人にとって自分らしく生きることが可能な場であること。自己実現の場となるためには、中山間地域が持ち合わせる豊かな資源と、多くの価値に満ち溢れた場であることに気づいてもらう事も大切だと考えています。昨年、行政職員がこの気づきを体感する試みとして、中山間地域対策若手職員ワーキングを実施しました。参加した職員は独自にテレワークもしながら、地域の方とお話ししながら、多くの気づきを体感しました。
次代を担う若手職員が「遊び方」、「繋がり方」、「暮らし方」、「働き方」の4つのテーマを、豊かなライフスタイル、交流の推進という軸で検討し、伐採樹木活用事業であったり、あるいは空き家サブスク移住事業であったり、子供のサードプレイス事業が出てきました。また、新たなビジネススタイルの推進ということで、高速通信網5Gを活用した中で何ができるかという事も考えていました。癒しの交流拠点をどのように創造するのか。中山間地域が新しいことにチャレンジしながらどのように作っていけるのかを若手たちが一生懸命考えています。
中山間地域のこれからについて、行政の立場で何を考えているのかをお話したいと思います。ここまでの内容を前提とした中で、中山間地域のまちづくりを今後どのように考えていくのか、これが今日のテーマでもあります「幸せめぐるまちづくりの未来」~都市から郊外、里山へ~。
ベースとなるのは、まちづくりは多くの人が共感できるビジョンが必要であることが大前提であると思います。そしてビジョンは、わかりやすく容易に想像できるものがいいのかなと思います。ビジョンの共有が、まちづくりに対する心的マネジメントにも繋がるのではないか。心的というのは、心の中でマネジメントが育つ、そのことによって、自分たちで何ができるのか具体的に考えることに繋がってくると思います。まちは生き物です。そしてまちづくりは不断の営みです。止まることない毎日のなかで、自分たちに何ができるかを常に考えていくことが、まちづくりに繋がると思います。そして、その主体はまさにそこにお住いの皆さんであったり、来訪者であったり、多様な人物がいます。もちろん行政も常に変化を続けるまちづくりに、どのようにコミットしていくのか、どのようにそこに関わっていくのか。行政に求められるのは、何より気づきであると思っております
また、内部環境、外的要因、社会的関係を、掛け算していくのが大事だと思います。強みを生かして、弱みを強みと考える。大事なのは、どれだけ自分たちが楽観的になれるかであると思います。楽観的になるには自分の意志が必要になり、意志をささえるのは、明確なビジョンになると思います。物事の価値の関係は一人ひとり違ってきます。だからこそ、その多様な違いが新たな価値を生み出す、このことに気づき、繋がることが必要であるし、それは行政が率先しておこなわなければならないと思います。
そうした私の考えが前提になりますが、中山間地域の目指す姿が、癒しの交流拠点の創造ということで先ほどお話しいたしました。都心に接しながら豊かな自然環境、多様な活動と人、資源を有する。それを藤野地域は歴史として背負っている。中山間地域の魅力を生かし、さらなる移住·定住の促進、関係人口の創出などコミュニティの充実に向けた豊かな暮らし方、多様な働き方の実現を図る。このことが癒しの交流拠点の創造に繋がっていくのかなと考えています。もちろん強みもあれば弱みもある。機会になるものもあれば脅威もある。そこをどのように掛け算していってプラスにしていくのか、そのようなところが中山間地域対策には必要かと思います。イノベーションを創出するのはまさに掛け算というところだと考えてます。中山間地域の取り組みの方向性についてまとめたものが、地域コミュニティの充実、ライフスタイル、ビジネススタイル、これがクロスオーバーする中で、相互に領域をむしろ積極的に侵しあいながら進めていくことが大事だと思います。中山間地域のフィールドを新しいことに挑戦できる場として捉えることに加え、対話を通じて公民など様々な主体が連携し、共生社会を実現する。そのことによってシビックプライドの醸成を図るということです。
津久井地域は豊かな自然の中で得られる幸せは勿論ですが、都心に近いことやICT等の技術により、都市部の便利な部分を兼ね備えている地域だと思います。しかしそういった要素に気づいていない方がとても多いように思います。
もともと相模原旧市の人達にとって、津久井地域をお荷物のように思っているだろうとも言われている
幸せなまちと利便性の関係とは何なのだろう。私たちが感じる利便性というのは一体何なのだろうというところを今日少し考えていければなと、そんなことも含めて今日のセッション、東浦さんのご意見もお伺いできれば、と思っております。よろしくお願いします。私からは以上です。
高橋:森副市長ありがとうございます。今回ゲストでお招きした東浦さんは、渋谷、たまプラーザ、南町田と様々なまちづくりのご経験をされてきています。そのご経験からも、色々と意見交換をさせて頂ければと思っております。
東浦:はい、今日はお招き頂きましてありがとうございます。東浦と申します。
今回なぜ、相模原市に電車を走らせていない東急の人間が来ているのかということで、違和感を持っている方が沢山いらっしゃると思いますが。私、社歴の中でも、ほぼまちづくりが長い経験としてあり、現在はフューチャーセンターラボというイノベーション系の責任者、沿線生活サービス事業ユニットというソフト系の責任者として、ウェルネス、エンターテイメント、ICT、生活インフラ系のソフト面のことをやっております。
ですから、そういう意味では、硬軟取り混ぜて色んなタイプのまちづくりに関わってきました。10年ほど前に、髙橋さんにまちづくり系の仕事をお手伝い頂く機会があり、その後交流がありまして、今回の藤野にお招き頂きました。藤野に来るのは初めてですし、相模原市の課題とか全く分かっていなかったのですが、下調べをし、昨日から藤野に入らせて頂いて、髙橋さんにまちを案内してもらいました。いろいろな中山間地域の課題はありますが、これだけ大消費地である都市部に近く、行き来もしやすい環境を持っている藤野は、コロナで大変ではありますが、森副市長が言われたような弱みとか課題が、プラスに働く可能性があるエリアではないかと思って聞いておりました。
相模原市の地図を見ると一目瞭然で、すぐ右側半分は、八王子だ、町田だ、勿論相模原中心部もありますけれど、割と平らな場所が多く、私たちもよく行き来するようなまちもあって、そこから一気に山になります。湖と山、際立った特徴のある地形の所という風に改めて思います。
これは不正確ですが、緑区の地形をなぞってみました。なんか私の目にはムササビみたいなのが見えてですね、何かこれがこのまちの特徴を示しているのかなと感じておりました。
このまちの色々な要素の中でも、16年目になるシュタイナー学園が、このまちに新たなインパクトを与えたとも思います。
今ではもう社会人ですが、自分の息子は中高の時に群馬県の草津の山奥白根開善学校という、寄宿舎付きの学校に6年間通わせてました。
私、父母会長もやりまして、6年間白根の山奥に通ったので、正直言って、今回の藤野が山であることに対してあまり驚きはありません。この学校はかなりの山奥にあって、最寄りのバス停から、学校まで徒歩で8kmあるんです。
この学校の本吉修二先生は、もうお亡くなりになられたのですが、教育が荒廃して荒れた時代があったときに、いわゆる偏差値一辺倒じゃない教育が必要だということで山の奥に篭って、苦労をされながら学校を始められました。すごく似ているなと思たのは。シュタイナーの思想ではないのですが、色々聞いてみると、似たような考え方、人は必ず良くなろうとしているんだということで、その子供達に合った教育をするという場所です。藤野に来てみて、自分の個人的なことと被りました。
私、まちづくりデベロッパーをやっていますが、デベロッパー、民間の開発事業者は、大きく分けて2通りあると思います。「狩猟型のデベロッパー」と、「農耕型のデベロッパー」です。私の理解では、世の中、9割以上は狩猟型のデベロッパーです。どこにでも行って開発をして、儲けたらそこからいなくなって、また次の狩猟場にいく。
農耕型のデベロッパーというのは鉄道系のデベロッパーが中心で、鉄道を走らせているので、沿線地域を来る日も来る日も耕して種をまいて雑草を抜いて肥料をやって収穫をするということを繰り返してやっています。我々、今年が創業100周年になります。農耕っていうと、春撒くと、秋収穫できちゃって、一年くらいなのでちょっと短いなと。私、最近、林業型デベロッパーなんじゃないかなということで、我々の大元は昨年『青天を衝け』というNHKの大河ドラマの渋沢栄一に端を発する会社です。我々の収益は先人たちが植えてきてくれた苗を今刈り取っているのであって、我々が刈り切ってしまったら、次の後輩たちがもう商売ができなくなる。だから我々の時代も適度な利益を得ながら、次の種を植えていかなきゃいけない。その繰り返しだということで、私は「林業型のデベロッパー」だとイメージしています。
そんなこともあり、私が数年前に「私鉄3.0」という、東急のまちづくり思想みたいなものを、私なりにまとめた本を上梓させて頂きました。これは東急の公式な本ではなく、非公認本ですが、かなり私が勝手なことを言ってます。
この本の帯に、出版社が、この本を売るために帯を付けたのが、ちょっとセンセーショナルで、「電車に乗らなくても儲かる未来 それが私鉄3.0」。
鉄道会社なのに乗らなくても儲かるってどういうこと?って、うちの鉄道事業部からクレームが出ましたが、私の考え方を今からお話しします。
これは、コロナの前に書いた本です。コロナの前の業績は右肩上がり、鉄道も年間11億人もお客様を運んでいて、首都圏で一番効率よく儲かっていた私鉄の会社で、何も問題がない。むしろ混雑対策をどうするのか、頭を悩ませていましたが、コロナで状況が一変しました。
東急電鉄だけでなくJRさん、メトロさん、私鉄各社含めて、首都圏の交通機関のコロナの中での乗降人員の推移推移ですが、コロナ対応状況によって多少上がり下がりするんですが、未だに戻ってない。各社によって差があるのですが、だいたい25%から30%、へこんだままの状態です。
皆さんご存知か分からないですが、鉄道会社の運賃は許認可制になっていまして、カツカツ儲かる程度のところで、国土交通省に決められています。2割から3割乗降人員が下がると、基本的には全部赤字になります。我々もホテル業も駄目、商業施設も駄目、鉄道も駄目ということで、昨年度決算は連結赤字に陥りました。今年は黒字に復帰できる見込みですが、やはり大変な影響がありました。私が、これを予見していた訳ではないんですが、コロナになる前から、いずれは乗降人員が減るんだから、その乗降人員に依らない、ビジネスモデルを作らなければならないよ、という事をこの本で書いているんです。
コロナになって、人はどのように動くのかということについて、つらつらと考えていた中で、簡単なマトリックスなんですけど、移転を希望する人、それから移転を留保する人、それから移転可能な人、困難な人、と分けてみました。
身軽派というのは、例えばIT企業の人とか、個人事業でやっている方などで、パソコン1つで、どこでも仕事できる人ですね。コロナ化で都心が怖ければ地方に行く。2番目に都落ち派。収入減になってしまって都会での生活が維持できなくなって移転する方、それから固着型とはエッセンシャルな仕事をされていたり、地域密着な仕事で動きようがないという方ですね。それから併用型というのは、動けるのは動けるのですが、別に今の生活に不満はなくてそのままでいいかなという方。そんなことを考えると、最終的には私、コロナが始まってすぐの頃の考えでは、動いて2割ぐらいかなと思っていたんですね。そのイメージが同心円状に広がっていく。都心から離れて行くのではなくて、湘南とか千葉とか山梨、長野とちょっと人気の有る処へ点在するんじゃないかなと。で、実際にそのようなことが起きています。今相模原、この藤野あたりは微妙な所にあるんですけど、果たして藤野は選ばれるようになるのか?これが今後の話ですね。
東急沿線は、コロナ前から人口がどんどん増えていて、社会増、自然増、両方あって2035年を迎えるまで人口は減らないんです。日本全国では人口減少に転じているところ、東急沿線では人口増を謳歌していたんですが、これがコロナによって変わりました。これは半年ごとのデータなんですが、東急沿線の都内というのは、渋谷区、目黒区、世田谷区、品川区、大田区、町田市。神奈川県では川崎、横浜の一部と大和市になります。全体としては、まだ人口は増えているんですが、都内の人口が減って、神奈川に移っているというのが分かる。先日、東京都の統計で久し振りに東京が転出減少になったというのがでました。まだどういう状況になるか分かりませんが、概ねこういう傾向になるんじゃないかな。
こういう状況が続いた時に、それまでのコロナ前の都市政策がこれから変わらなければいけません。アフターコロナで、いままで過密した都市をどうやって高層化して稠密化するかと言うことで都市計画ができてきていました。これを、どうやって適度に上手くバランス取りながら分散させていくかという事をしていかなきゃいけないのです。森副市長はご専門だと思いますけども、都市計画とか用途地域の変更、マスタープランの見直しというのは簡単にはできないんですね。スパン的には5年おきぐらいになっているんですけども、それよりも速くコロナの状況で人の動きがあるのに、追い付いてないっていうのが今の現状です。
今日、都心側の状況は置いときまして、これまで郊外は住むためのまち、都心が働くだけのまちだったのですが、今は職住近接の街というのが求められているんですね。今は、そういう都市計画になってない。仮に藤野に移ろうという事になった時も、失礼ながら藤野の駅前の都市生活インフラというのは貧弱なんです。これは別に藤野に限らず、郊外部はみんなそうなんです。なぜならば、お父さんは平日昼間都心に出かけてしまって、地元郊外のインフラを充実させる必要がなかった。都市政策は硬直性があったのですぐには変わらない。じゃあ何か変えようっていうと、今まで郊外に長年静かに住んでた方が、「俺はこの静かな環境が好きなんだから、あんまりゴチャゴチャするの嫌だから変えないでくれ」と言う人もいて、簡単に変わらない。なかなか郊外へ民間の投資が向かない。相模原市さんもどうなのか実状は分かりませんけども、一般論でいうと基礎自治体の財政は基本的には厳しくなっているということですね。
郊外型の都市でやらなきゃいけないことは、都市計画方針の大転換ですよね。相模原市さんは立地適正化計画をやられてると思いますが、それをどう上手く利用させていくかということですよね。住宅地に求められる役割は明らかに変わってくるので、インフラの再整備含めてやっていかなければいけない。それから変わっていかなければいけないという事に対して、国民レベルで合意形成ができていない。時間は掛かるんですけども、まちづくりリテラシー教育をやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。自律分散型のコンパクトな駅前空間のリデザインが必要になります。
私が書いた私鉄3.0に書かれていることですが、私鉄1.0は20世紀モデル、これは東急に限らず小田急さん、京王さんも同じですが、だいたい郊外の宅地化、やはり山林原野だったところを造成、宅地にしてそれを売って儲けてました。通勤電車に乗ってもらって儲けて、都心のターミナルでいろんな商業施設やオフィスを作って儲ける。こういう手法がもうきかなくなってきていて、東急の場合は今ビジネスモデル2.0っていうのをやっています。郊外ビジネスは小さくなり、都心ビジネスが大きくなっている。それから二子玉川とか、自由が丘とかそういった中間エリアにも投資をし、そこで職住近接を実現する。鉄道はいずれ通勤電車としては先細っていきますが、短距離を反復継続移動していただくための交流鉄道になればいいじゃないかと。で、これを今やっています。ところがビジネスモデル3.0というのはですね、もっとデジタルの力を使ってどこにいても変わらないような生活環境が得られるという世界観ですが、これはまだ実現しておりません。これを目指していってみたらどうでしょうかっていうのを持論として書いた本です。
今まで我々は郊外に住み、真ん中の都心部で遊んだり働いたりしてましたが、今はいろんな状況で商売が上手くいかなくなってきました。だから大きくビジネスモデルを変えてみましょうということになります。
私ども東急は、ちょうど2019年のコロナの直前に、これまでは、郊外で住、都心で職と遊がある、という都市構造を時間をかけながら、自立分散型の都市構造に変えていく、サイズの大小はあるんですけれども、適度に郊外でも職住遊のバランスが取れた街にしていきましょうという長期経営構造を発表しています。
これも私の持論ですが、これから日本全国津々浦々のまちが自立できるのかというと残念ながら、私はできないと思っています。自立するまちと衰退するまちに分かれます。私はこの4軸で考えていまして、まず多世代⇄高齢化軸があります。多機能⇄単機能軸、放置⇄再投資軸、生産⇄消費、とこの4軸で考えています。
多世代というのは、その地域に老いも若きもが共住しているって事ですね。お年寄りだけしかいないはまちは、中々自立できない。
多機能というのは、職住遊バランスのとれた用途地域のことで、単機能っていうのは、住むしか機能のない街です。
放置⇄再投資というのは、再投資は民間による投資力が向くまち。放置っていうのは行政の支援しかないような街。
生産⇄消費軸は、工場を誘致しましょうというのではなく、小さいながらもその地域に、小さな経済圏が回っていることが理想で、お父さんが都心で稼いできたお金を、お母さんとこどもが消費だけをしてる街はちょっと厳しい。この生産、多世代、多機能、再投資側に入れば、何と自立できる可能性が高そうです。
逆に放置、単機能、高齢化、消費のまちっていうのは、厳しそうですね。って言ってたんですが、コロナで、これだけじゃ足りないなって思ったんですね。足す要素としては、移動の自由の確保。モビリティアズアサービス、MaaSっていうのも、バズワード的に出てますけども、多様な公共交通連携をした形で、地域を支えていかないといけないというのも感じます。
今日試聴してる方は必ずしもまちづくりの専門じゃない方もいらっしゃると思うので、私がいつもまちづくりをする上で大事にしてるような要素を8つにまとめましたので、ご紹介します。
経済循環、働き方、住宅品質、教育・子育て、健康寿命、移動の自由、環境エネルギー、観光と景観。それをわかりやすく言うと、内側に書いてある賑わいとか、お金の問題のようなこと。そして、青臭いですが、最後街づくりは、その地域の方の幸せのためにやっているんだと思ってます。
まず、経済循環の話。右に漏れバケツ理論と書いてありますが、どういうことかというと、その地域で消費する時に、どこで消費しますか?便利なんでコンビニだとか、大手のスーパーとかで買い物する事は、否定は出来ないんですけども、そのお金は二度とあなたの街にはかえってきません。
地域内の個人商店を含めて、大切にする事によって、もう一回その地域にお金が巡っていく。これが、経済循環の話で、ナショナルチェーン店や大手の資本のお店で使うとですね、この漏れバケツのようにお金が外に流出してしまいますよという話です。
かつては大都会に全て一点集中し、出張とか通勤という形で郊外や地方と繋がってたわけですが、今は、リモートワークができるようになり、移動しなくても大丈夫じゃないかってことが皆分かってきた。もうコロナも二年目になりますが、企業なんかでも郊外に本社移転している。働き方の多様化も大事な事です。実は生活コストは安くなってますが、質も悪くなってしまうのが一般的です。如何にして生活環境の質を高めていくかが大事になります。
それから住宅、住宅地の問題ですが、郊外、例えば藤野は、お話聞いたら今でも移住者は増えているが、住宅供給が不足しているという話を聞いてます。今まで、都心で住んでた住環境と同等に満足できるかというと、なかなかそうもいかない。分散型でもいいが、住宅の品質は保たれるのかという話ですね。
ここはシュタイナー教育が盛んで、藤野に大きなインパクト与えていると思いますが、日本、地域の未来は子ども達が担っています。ところが、意外と世田谷区や目黒区では、保育園の新設に反対されるんです。待機児童の問題を一生懸命解消しようとしても地域に反対されてしまう。Not in My Back Yard、NINBYといいますが、総論は賛成だが、自分の裏庭にはやめてくれというクレームでして、総論賛成、各論反対が地域で横行する。このNIMBY問題を解決しないと地域の問題ってのは解決していかない。またシュタイナーもそうですが、これからは公的な教育だけでは足りない。グローバルな感覚を持った子供達を育てたり、STEAM教育など、新しい要素も取り入れて行かないといけない。
それから、全ての方に地域でいつまでも健康で、長生きして頂きたいわけですが、やはり平均寿命と健康寿命との間に、寝たきりの年数が何年かずつ出てしまうので少しでもそれを短くしていくことが大事です。長野県は県を挙げて取り組んでいて、効果を明らかに出していますが、意外と特に都心部はなかなか。。高齢者の問題って地方の問題ではなく、都市問題なんですね。ここを地域ぐるみで、如何にして健康寿命を長くしていくかに取り組んでいく必要がある。
またラストワンマイル問題。昨日は高橋さんと話していて思いましたが、旧藤野町、いいとこだけど大変だなというのが、目の前に見える向かい側の集落に迂回しないと行けない。バスも途中までしか来てない。この移動の自由を確保する、ラストワンマイル問題って言うのが大事です。
それからエネルギー問題。残念なことにロシアとウクライナで戦争が始まり、エネルギーコストが世界的に上がっています。日本は、今まで豊かだった時は化石燃料を海外からじゃんじゃん買ってきて、もっと高い付加価値を作って海外に輸出して、国を成り立たせていました。今では、エネルギーつくりだけで年間25兆から30兆近くの国富が他国に流れている再生可能エネルギーを含め、なるべく地産地消、自律分散型でエネルギーを創ることを民間レベルでも国自治体レベルでも取り組んでいく。藤野の場合は藤野電力が先進的な事例になってる訳です。
それから景観、観光問題。今インバウンドの方が日本に入って来れませんが、やっぱり観光は大規模産業で、30兆円近くのお金が動く訳です。コロナ前は藤野にもアートの関係で外国の方も来ていたと聞いてますが、いずれまた来られるときには、色んな行き先がある中で藤野を選んでいただくために、アートや自然環境が豊かだって言うのはいいのですが、目障りな電柱、電線のないインフラ整備であるとか、過剰な看板類はなくす。そういうことを地域の方々と話し合いをしながら、環境景観を良くしていくこととで、景観が売りになると思うんです。
ということでこの8つが大事ですが、これらをまとめていくために力を発揮するのが、デジタルの力だと思うんです。DX(デジタルトランスフォーメーション)、DXと言いますが、何からやっていいのか分からない場合、こうした8つの問題×DXをしていくと、良いのではないかなと思います。
相模原市さんは、ちょっと前のデータですと、魅力都市ランキングでみると、全国20の政令都市の中から下の方になっています。健康指標や、生活指標は高くなっていますが、最下位なのが文化指標や教育指標。これは市全体なので、藤野や緑区とかの問題ではないのかもしれませんが、こうした所に課題感があるので、この辺を相模原市が改善していくと、政令都市の中でも、ランキング上がってくるんじゃないのかな。そこで、今このコロナが逆にチャンスになるのかなと思います。
コミュニティは、三すくみ状態になってるというのが私の認識です。
住民、民間企業あたりがプレイヤーとしているんですが、それぞれが自分のことだけを考えてやってきている。それぞれの言い分があり、なかなか融合できない。
こういう問題が東急沿線でもありました。、これ高橋さんと一緒にやった仕事のひとつ(次世代郊外まちづくり)ですが、東急田園都市線のたまプラーザという駅。ここは昔TBSで「金曜日の妻たち」っていう大ヒットしたドラマがあった舞台で、新興住宅地、ニューファミリーのまちとして、憧れられていましたが、今は完全にオールドタウン化しつつあります。これではまずいとなり、横浜市さんと一緒に東急がタッグを組んで、地域住民と三者一体となってまちの再生をしようと2012年からやってきました。これは様々な郊外で同様の問題となっていますが、これを、ただ放置していると、まちの衰退につながってしまうことがわかります。
しかし、この10年の経験から、変われる要素はあると思っています。これまでバラバラだった産、官、学、民が、色んな要素でつながりはじめてきた。もちろんデジタルの力は大きいと思いますが、みんなの意識の変わり方、最近で言うとSDGsなんて言う言葉、一番いいと思いますし、民間企業も副業OKとか在宅勤務OKとか。今までは気持ちがあってもつながれなかったのが、つながり始めたと思います。
そんなことから、横浜市と東急で、包括協定締結を2012年に結び、このたまプラーザを舞台に住宅地がオールドタウン化するのを防ぎ、新しい価値を創り出していこうというのが、この「次世代郊外まちづくり」の骨子で、10年以上やってますが、だいぶ効果が出ています。
昔の古き良き時代に戻そうというのではなく、これを機会に郊外の有り様を変えようっていうプロジェクトで、豊かさ、暮らし、住まい、仕組み、土台っていうように、大きな要素に分解して、郊外住宅地がどうなっていくかということを、住民の皆さんに入ってもらいながら議論してきた。
皆さんのお家にもリビングルームがあって、家族の団欒、お客さんを迎える多目的な部屋になっていると思いますが、街にもリビングルームがあっていいんじゃないかというのが、コミュニティリビングという考え方です。同じたまプラーザの中で、大体400〜500mの徒歩圏内の中でクラスターを分解してコミュニティリビングを設置します。
古くなった団地の再生や社宅、戸建ての建て替えを上手く使いながら、このコミュニティリビング機能を入れていく。そのために障害になるのが、第一種低層居住専用地域の規制。コンビニ一つ入れないので、横浜市とも連携しながら、地区計画を作り、機能を充実していき、民間企業の投資もお願いするという事をやってきました。
また、新しく開発した場所に地域住民の方々の公民館的機能が全くなかったエリアだったので、そういったものを提供しながら、イベントをやったり、この森ラボのような機能を整備し、地域の輪を作っていってるって感じです。
20世紀の終わりまでは、どんどんまちが広がってきたんですが、21世紀はどちらかと言うと、都市が縮退しているところで、どう上手く対応していくのかが問われていると思います。このコロナで、また分散という形になっていくので、新しい形をたまプラーザでも議論していると思います。
地域衰退のワーストシナリオこれを放置すると大変なことになります。最終的には地域価値下落、人口の転出、地域の衰退を招きます。
これを避けるためには考え方を変えていく必要があります。そこで暮らしている住民の皆さんは総論賛成、各論反対とか言ってないで、地域の問題を我ごととして意識を持って頂くことが大事です。民間企業も利益だけを追求していないで、SDGsや、ESG投資みたいなものを見ながら長期的な目線で地域に係わりながら改変して行くモデルを模索しましょうよと。行政も、前例がないとか、法律でそれはできないとかいうようなことばかり言っていると、こういう問題は解決していかないので、その点をクリアしてください。それを全部寄せ集めると文殊の知恵になっていく。そうして、コミュニティ問題の解決に繋がっていくと思います。
まちづくりはうまく回りだすとシナリオはさらによくなり、先ほどの悪い例の逆回転が起きます。バックキャストで地域の問題をみんなで話し合い、地域にあるリソースを最大限に出し合い、そこに公共部門と民間企業の知恵と資金が混ざり合うことで、非常にいいサイクルができるんじゃないかなって思います。その結果、地域価値は向上し、地域の愛が増加し、人口も増え、地域創生が実現するのではないかと思っています。
最後に、藤野に贈る6つのキーワード、語呂合わせみたいなものを考えてみました。
「Future oriented 」未来志向でいきましょう。過去の問題に拘っていると新しい事は出来ません。
「Uniqueness」 藤野と同じ様な中山間地域は沢山あります。藤野は既にユニークなところを沢山持っていますが、それを磨き上げることが大事です。
「Job Creation 」そうはいっても食う事ができないと住むことはできないので、仕事を作りましょうということ。
「Inclusive power 」長く地元にいる方と移住者が上手に交わってやっていくことが大事だと思います。
「Native Beauty 」人の手の入った里山風景が維持される事で、藤野の良さが出てくるかなと思います。
「Omnibus 」今でいうとシェアリングという考え方になりますが、乗り合い主義、共有主義等、独り占めせず、仲良く上手く資源を共有するという事が大事ですよということ。
これを繋ぎ合わせるとFUJINOになるという語呂合わせでございます。ありがとうございました。
髙橋:ありがとうございました。早速トークセッションでお話を伺いたいとおもいます。お互いのお話で、印象に残ったところをお伺いできればと思います。
森:印象に残ったところとしては、最後のFUJINOの語呂合わせに地域コミュニティづくりのヒントがこめられていると感じました。旧藤野町民にとっては、色々な外圧にふりまわされた経緯があったり、ご苦労をしながら、藤野を未来に向けてどう考えるのかという事を真剣に考えた、数十年の成果として今があるのかなと考えています。ただ、この力を緑区全体というか、その他の中山間地域にどう広げていくか、また藤野自体をどうブラッシュアップしていくのかという事が、中山間地域に住む上での幸せを見つけることに繋がっていくのかなと。この六つのキーワードを、それぞれの住民の意識の中に常に持っていく事が重要なのかなと心にとめさせていただきました。
東浦:高橋さんの感想も聞きたいです。
高橋:改めて再認識させていただいた部分があったかなと思います。これまで出来てきたことと、これから、こんな事をやっていったら良いのだということを伺えました。この森ラボとして必要だなと感じている事が、仕事の創造です。また、現在も、首都圏への移動乗降者数の減少が戻っていない。これは、2-3割の方はテレワークで仕事ができるという事が理由にあるかと思います。ICTを活用して里山などに住みながら、たまに都心に出る、といった様なライフスタイルが増えて行くんだろうなと。また、そんな働き方の出来る、新しい仕事が増えていかなくてはと思いました。
また、シェアリングというお話しから、感じた移動の問題があります。藤野駅から(都内に)通勤されている方は、車で駅に来てる。すると、一人だったり二人だったりと後部座席が空いている事が多いので、そこに病院に行きたいおじいさんを乗せてみるだとか、その様なアプリ、サービスが出来るんじゃないかということを個人的には考えておりました。
お話の中でも、ICT、デジタル化という話がありましたが、今後の中山間地域におけるデジタル化において、どの様な可能性を考えられていますか。
東浦:市街地に近く、クリエイティブな事が行われているという点では徳島県の神山町は似た様な環境だと思います。徳島県は県全体でも世田谷区より人口が少ないといった状況ですが、そこを逆手にとって、太い光ファイバーを敷いてデジタル通信を強みにして、人を呼び寄せているという事があります。藤野はどの様な状況ですか。
髙橋:旧藤野町の時代に光ファイバー網を整備したと聞いています。
東浦:その様な基礎的な環境をPRしていけば、だったら藤野に行こうかなということになると思います。相模原市は5Gの整備は進んでいないと思いますし、5Gの電波は直進性が強いので、中山間地域では難しいんじゃないかと思いますが、如何でしょうか。
森:5Gは若手ワーキンググループで提案されましたが、今後、検証が必要だと思っています。神山については、西の神山、東の藤野という言われ方は、前からされています。神山はデジタルの強み、藤野はまた別の方向性になっていると思います。5Gはともかく、光ファイバーは整っているという事で、ここでもテレワークはできるということが分かった。職住近接または一体型、住んでいる周りにテレワーク出来る場所が確保できると充実感は満たされるかなと思っています。森ラボが拠点性を持つことで、この様なコワーキングスペースが中山間地域に増えていけば面白い。この様な働き方ができるよねとなっていくと思います。
東浦:神山町で昔、川の中でテレワークしている様な写真が出てきて、都会で働いている人に刺さったということがありましたが、ちょっとしたところにWi-Fiを置いて、山のコワーキング、森のコワーキング、湖のコワーキングという様に、こんなところでテレワーク出来るんだ!という様に、都会じゃ考えられないコワーキング空間が欲しいなと思いますね。
髙橋:森ラボがハブとなって、宿泊所を紹介して、その方が高速通信が必要な時は、森ラボにきて作業する等の役割ができたらいいと思っています。まだ各旅館や飲食店の通信環境が整っていないのは実態はあるので、Wi-Fiの整備は並行して必要だと思っています。
今後の森ラボの取り組みで、シニアのスマホ講座なども考えています。シニアのスマホが使えるというだけでも防災、医療で役に立ちますし、地域住民のDX化によって生活環境は整ってくるのではないかなと考えています。
東浦:渋谷区では、在住高齢者全員にスマホを配り、さらに使い方を教えています。高齢者はデジタルが苦手だからという理由でDXをやらないという論理をやめようと。この世代でも使えるから、全員使えるだろうということでやっているんですよね。上勝町では、葉っぱビジネスをおばあちゃんたちがタブレットで相場をみてる。覚えたら使えるし、使えたら楽しいし、意識を変えるのが大事だと思っています。
森:その中で大事なのはインターフェースをどうするかということ。行政としても考えていかなくてはならないのは、アプリケーションをどう高齢者の方もアプローチしやすいものを提供できるか。市役所も手元にあるものをどう作り、どう提供するかも大事かなと思っています。
髙橋:東急さんが、職住遊の自律分散のまちにハンドルを切られているということですが、具体的に郊外ではどの様に進めていく予定なのでしょうか。
東浦:二子玉川でも2011年にコワーキングスペースを作った当時は二子玉川で働くなんて、ないよねという感じだったのですが、楽天さんがオフィスを構えられ、コロナも後押しになり、今は普通になっています。大きなビルを構えたり、企業誘致するって考え方ではなくて 、森ラボの様な場所をどのエリアにも提供していくことで実現するんじゃないかな。先ほど話したジョブクリエーションですが、大手に頼まなくてもいい仕事って結構あります。昔は周りにクリエーターなどがいなくてできなかったですが、今は近隣のクリエーターや個人事業主になるべく仕事を出してあげる、そういう地域の仕事をなるべく地域で回していくというのが大事ですね。
髙橋:漏れバケツの話も伺いましたが、藤野にはトランジション活動があり、地域通貨みたいなものも基本になっていて、地域内の消費や、エネルギーなど、地域外に出がちなものを、地域内に残していかなくてはいけないということだと思うのですが、森副市長は、今後どんな風にしたらという思いはお持ちですか?
森:藤野に面白い事例はいくつもあり、藤野電力や地域通貨”萬”など、金銭のやりとりに繋がらなくても必要としてるものが循環しているなど、多様な経済循環の仕組みは成り立ちうるのかなというのが一つ。またラストワンマイルの問題で、MaaSを考える上でも、地域通貨”萬”の中でというのもあり得る。ここ藤野では色々実証がされている。そこでどの様な課題が出てくるのか、共にやっていきたいと思っています。
東浦:藤野は最先端事例を沢山作られていて、本当に感心するばっかりですが、海の向こうでは戦争が始まり、不確実なことがこれから増えそうな感じがしています。今後は金利が上昇したり、インフレに戻っていく様なこともあるのではないか。この地域の中だけでの独自の経済のルールがあるというのは、一つの生活安全上のバッファになるんじゃないかなと思うので、それを確立している藤野は期待できるんじゃないかな、と思うんですけどね。
髙橋:中山間地域の強みとしては、元々の地域の地縁があると、関係性が生まれやすく助け合いがしやすい。郊外でも(新規移住者ばかりの)団地の様な場所だと人のつながりが、生まれにくいということもあるので、新しくお祭りを始めたと聞いたことがあります。地縁の強さは、中山間地域の地力の強さとなり得るのかなとは思っています。
東浦:イノベーションに必要なのは多様性だと言います。団地等に住んでいる人たちも基本的には均質ですが、藤野はすごく多様性に富んでいてバックグランドが違うので、お互いリスペクトする要素が多いのではと思いますね。スキルだとか生活の知恵だとか、この街で可視化されているものがありますね。
森:均質化されていると相手のことが容易に推測できてしまうので、相手がどういう人だろうということがあまり想像できないが、あの人何やってるんだろうねと思わせるだけで心が惹かれる。藤野にはそれが満ち溢れているのでそんな力を広げていきたいなと思いますね。
東浦:たまプラーザでは住民創発プロジェクトということをやったんですよね、住民のみなさんから自分も関わりたい、こんなことをやりたいというプロジェクトを提案してもらおうという企画でしたが、27団体から応募があり、15団体が認定しました。ものすごく多種多様性が出てきたんですよ。自治会でも関係性がなかった方々が、スキルを持ち合わせて融合して関わる様になったということもありました。
髙橋:森ラボでも住民創発プロジェクトを参考にしていただき、プロジェクトという試みを始めています。移動のテーマについては、藤野にも実証運営として電気自動車を試してます。東急のMaasについての試みを、共有いただいてもよろしいでしょうか。
東浦:実は東急もMaaSプロジェクトを沿線型MaaSと観光型MaaSでやっていますが、私はやり方を間違ったかなと思っています。
コロナが流行り始めた直後に、補助金で満員電車に乗りたくないという利用者のために都心に向かうバスを電車と並走させており、それは違うんじゃないかなと。先ほどの地域ラストワンマイルをやらないとダメだと伝えましたが、まだ実現していません。今はバス停から遠い場所などにフォーカスして、プロジェクトを進めていこうという流れになっています。全国津々浦々MaaSプロジェクトというのがありますが、みんな社会実証実験止まりなんですよ。それは補助金が切れると続かないし、警察の目も厳しく実証期間しか成立しない。マネタイズも難しく、介入したベンチャー企業も補助金がなくなるとやめてしまいます。東急は、住民が東急沿線の街に住み続けてもらうために、無料でやるべきだと私は思います。無料で行い、安心して最後まで住み続けてくれる方々にコミットするべきです。東急は総合生活産業であり、無料で行なったとしても東急のショッピングセンターなどを利用していただければ、帳尻を合わせることができるので、MaaSプロジェクトだけでお金を稼ごうとするな、というのが私の持論です。
髙橋:アプリを使って乗り物を呼び、乗り合いで駅まで行くなどという取り組みも行われていますが、収支が難しいと聞いたことはあります。
東浦:うまくいかないところがほとんどですよ。それが実装段階まで行った事例は一つも聞いたことがありません。
髙橋:自動運転とかがもう少し進めば、人件費を減らすこともできるかもしれないですね。
東浦:私はあまり自動運転は信用してないです。高速道路のような専用の軌道があれば可能だと思いますが、例えば藤野のような複雑な道で自動運転はほぼ不可能だと思いますね。自動運転より先に先ほどのシェアリングスタイルだとか、相乗りスタイルの確立が必要になると思います。
森:移動困難の課題を抱えるのは中山間地域に限らず、市街地でもバス路線がない場所や、そういった課題を抱える地域は多くあります。高齢者は生活圏が限られていますが、最適な移動手段が見つからないということがあります。その対策については、行政でも色々考えていて、乗合タクシーがいいのか、デマンドがいいのかなど様々な案はありますが、先ほど東浦さんもおっしゃっていた通り、実証運営の域を出るものはなく、もう少し色々な方法を考えながらですね。
高橋:まちづくりのリテラシー教育が必要だという話がありましたが、具体的なイメージはありますか?
東浦:郊外では職住分離モデルで自分のまちのことを知らない住民が多い。まちの中で経済が動く実感がない、ベッドタウン化の弊害です。だから、地域に関心を持たないんです。週末は静かに寝ていたいのに子どもがいる施設を作らないでくれ、となってしまう。コロナで良かったのは、在宅などで地域にお父さんたちが戻っている。地域の問題が身近に感じられるし、これが長年続けば、発言とか行動一つで、地域が良くもなり悪くなるんだってわかってくると思うんですよね。藤野はコンパクトにそれが日常として起きてるので、良い状況だと思います。
環境意識については子どもたちの方が意識が高い。私の子供は2人とも社会人ですが、怒られることがあります。次に育ってくる世代の人たちにまちづくりの要素などを教えてあげれば意識が育ってきて大人を叱る、「おじいちゃんお父さん、そんなんじゃダメだよまちづくりは!」と言ってくれる人がどんどん増えてくれば変わってくると思います。
今のZ世代(1990年代中盤から2010年代序盤の生まれ)は私たちの調査でも、かつてないほどESGとかSDGSに関心が高いそうです。大人は最近SDGSってなんだ?ですが、子供たちはもう身についてる。グレタ。トウーンベリさんみたいな人が世界に発信しちゃう。次々とそういう世代が生まれています。恥ずかしいけど、子どもたち、次の世代の人たちから、大人が学んで「まちづくりちゃんとやらなきゃ駄目だよな」って思ってもらうのが一番いいのかもしれません。
高橋:相模原市でもSDGSの推進室ができたり、シビックプライドの条例を作ったりは郷土愛とかそういった環境についての視点を伝えていこうなど、子どもの教育に向けても進めてきていますね。
森:SDGSについては大きな柱として、計画がSDGSの17のゴールに紐付いているのかということも可視化するような形にしてます。お子さんたちの場面で言いますと、これはSDGSという言葉が出て一般的に使われるより以前から出前講座として、資源の問題については環境整備士さん自らが学校に出向いて「これとこれは分別するんだよ」「こういうものは資源になるんだよ」という話をしていた。あるいは総合学習の一環で、「水と油を一緒に混ぜて流すのは良くないね」など含めて学びの機会っていうのは確保してきています。
そこに言葉としてSDGSというものがぶつかってくると、子どもたちの理解ができていくんだと思うんですね。17のゴールすべてを子どもたちが言い切れるということではなくて、環境問題についてはこういうことが考え方のベースにあって、だから今日教わったこれはこうなんだね、というところが体系として出来上がってくる良いきっかけとしてSDGSという言葉が出てきているのかな、というふうに思います。
先ほど仰ってたように子どもたちが学校で学んだり、地域で学んだことを含めて持ち帰ることによって、家庭全体での学びが進んでいくっていうのは重要だと思うんです。子どもたちから言われたことは親の側にしてみると、子供の目が光ってる。これは非常に大きい力になるかなと思いますので、パートナーを増やす、各団体機能のアップを目指すということにももちろんですけど、子どもたちに環境負荷低減をするためには何ができるのかを考えてもらう機会を作っていきたいです。
高橋:ありがとうございます。私、昨年ゼロ・ウェストセンター(徳島県上勝町)に子どもたちと一緒に泊まりました。分別を何十種類とするんですけど、理に適った分別がされていました。また、1、2年で始めたわけじゃなくて、野焼きしていた状況から改善していった積み重ねの歴史を感じました。
帰ってきてから子どもたちのゴミ分別に物凄いチェックが入るようになりまして、「ゴミのプラスチックのところもう少し分けなきゃ」とか「行政でももっと細かく、分別の仕方を考えないのか?」みたいな話をされるようになりました。未来に向けての担い手は子どもたちですので、その力は大きいと本当に思います。
今回メインのテーマとして「幸せ」があります。暮らしやまちづくりの中心は、「幸せ」の為にやるやってるはずなんだってことをおっしゃっていました。このあたりで感じていらっしゃってることはありますか?
東浦:制度としては色々なものができてきているんですけれども、やっぱり企業人として、月曜日から金曜日まで根詰めて夜まで仕事してると、人によっては心を病んでしまったり、ブラックな状況が起きたりは今でもあると思います。今回、リモート在宅勤務をやって、負の面もありますが、なんであんなに根詰めて抱えてへとへとになるまで仕事したんだろう?とか、通勤がなくなってこういう形で仕事できるんだったらいいなぁ、心が安らいで緑も見える。って感じがあると思います。
コロナって負の面がたくさんあるんですけれども、ちょっと離れてみて「何のために働いてるだっけ?」とか「家族ってなんだっけ?」「地域ってなんだっけ?」って考えるのに良い機会だったと思うんですよ。
高橋:東急さんでは、テレワークはOKなんですか?
東浦:うちの会社はかなりカチカチに硬い就業規則があった会社んですが、コロナ以降、意外なほどから早くゆるゆるになりましたね。なんでもOKになりました。当社はもともと9:30始業でしたが、パソコンの前に9:30にいる必要もなく、かなり自由度が上がり、特に若い子育て中のお母さんから評判いいですね。
高橋:私自身も事務所のある渋谷に通ってましたが、コロナによって行かなくなってくると「何のために通ってたんだっけ?」と。打ち合わせもオンラインでとなると、これまでの通勤時間、本読んだりも出来ましたが、結構、エネルギー使ってたなぁ・ということがあります。ビジネススタイルやライフスタイルの感覚がフワ~っと移行しているというか、これまで何だったのかな?みたいなことを感じる部分はありまして。
東浦:毎日見てたはずなのに、全然記憶に残らないような事が時間と余裕ができると見えてきたり、感じられたりする。あるいは美術館なんて行く時間なかったけど、ちょっと行ってみようかとか、そういうゆとりもできたりとかしますね。
高橋:打ち合わせの時間は短くなりましたね。これまで、2時間だったのが30分とか。2時間確保してたのが、30分あれば本編は終わる場合もある。コミュニケーションとしての雑談は必要かなと思いまが、ポイントを絞ると15分でも20分でも終えられてしまう会議もあります。効率とか仕事の仕方とか変わるよな、という印象はありますね。もちろん職種によっては、テレワークできないケースはあると思います。相模原市の方も印象としては推進まではなかなか進み切らないのかななんて印象あるんですけど、どうなんでしょうか?森:テレワークに切り替えるかは部門によって馴染みやすい所とそうでない所があるんで同じような話はできないですけど、とはいえテレワーク実際やってみたら案外できるよね、先ほどの話じゃないですけど、今までの会議1時間取ってたのが30分で済むね、などは経験値として持てているので、ものによってはテレワーク促進というのはこれから話をしてます。ただ機械的なサービスの部分はどうしてもやむを得ずテレワーク切り替えは無理と、使い分けしながらですね。
~~~Q&A~~~
Q:中央区に住んでいてなかなか足を運ぶきっかけがないので、どんな形で親しめばいいでしょうか?
森:私の方から、市の方で考えていることを。
中央区・南区の方が緑区の藤野について十分知っているかというと知らなかったり、津久井の方について知ってるかというと知らなかったり、市の中でのギャップをどう埋めていくかというのが課題としてあって、市域でのマイクロツーリズムの必要性が市の中でも語られています。
南区の人中央区の人に中山間地域を楽しんでもらうということが一つ。南区の良さ中央区の良さを中山間地域の人に知ってもらう。そのことによって自分たちの今の住み方にレビューをかけていくということができ、地域に対する愛着も生まれますし、見直していかなきゃいけないところも見えてきやすくなる、と。
東浦さんのスライドで見てもわかる通り、市街地の山なんてないようなところの人たちにしてみたら、ここは一体どんなところなんだろうね、想像だけではなかなか分からない。それこそここに来てもらって、コロナが落ち着けばなんですが、希望者をバスで来てもらって一日楽しんでもらうとか、民泊交えてやっていくとか、そんなことも含めて考えていけばな、という話を進めています。
東浦:やっぱり心の平穏っていうのが大前提ですけど、リトリートという言葉がありますが、要するに日々のテンションの高いところを少し開放してリラックスすることです。絶好ですよね、リトリート場所がこんな近くにあるなんて。
高橋:1時間で着きますからね。
東浦:副市長が仰ったようにバスとか仕立てていただければもっと早くいけるんじゃないですかね。
森:今、ソロキャンプで藤野には多くのキャンプ場があったりで、仕事終わってからちょっと車走らせればキャンプ場に行って火を見つめてリトリートして、また帰っていくというのが短時間でできます。
東浦:なかなか移住ってできないんで、リトリートから始めるっていいと思うんですよ。私のアペンディックスで作った資料をご覧いただければ。
今までは忙しいファストシティだったんですけど、これからは幸せを考えてスローシティっていうのがいいなぁと思ってて、私が好きなこのスローシティって本に8つのキーワードがあります。交流の場所を増やすとか、さっきの漏れバケツ理論とか、散歩しながら地元でいいものを探そうとか。スローシティのキーワードとして紹介されているんですけど。美味しい水が飲めるありがたみを感じようとか、どうせやるならあっと驚く奇抜なことやろうみたいなこととか、エネルギー問題を地域で考えようって、これもう藤野でもう結構できてるんじゃないかな。だからかなりスローシティの要素を持ってるなと思って。
ここ最近見てきた、これいいなぁと思ったのは、横須賀の猿島。元々軍の無人島なんですけど、ここを使った暗闇と音だけで楽しむアートイベント、ナイトフェスみたいな感じで藤野でできるんじゃないかな。それと帯広に行ってたんですが、犬ぞりツアー。他じゃできない企画でやってみるとすごい印象的でフェイスブックで物凄く「いいね」がついたんです。こういうことを藤野の山間地ならではのアクティビティを考えたら面白いです。
これも去年白馬でワーケーション行ったときに見たんですが、山にブランコを作っちゃうんですね。漕ぎ出すと下がなくて天空に放り出されたかのような錯覚。すごい人気で待ってるんです。1回500円くらいですが。
高橋:設備投資もそんなにかからないですね。
東浦:山に突き出したインスタ映えする場所。こんな所は藤野にいっぱいあるだろうな。また沼津の運動公園の中に指定管理でやった「in the park」、森の中に宙吊りになったソロキャンプみたいなのに行ったんですが、すごく魅力的で。こんな環境は藤野にいくらでもあるだろうと思うんですね。いいお値段取れるんですよ。
東急の事例なんですけど、なんてことない戸越銀座って駅を木化したら賞をいっぱいいただいたり、これだけを見に来るお客さんが増えたりで、今うちの鉄道は木化した駅を増やしているんですけども。木ってすごく大事で、藤野の駅ってあまり面白い駅じゃないですけど、JRさんの許可を得られればこういう木で森森した駅にすればいいと思います。。
あと移住者の方も含めてわざわざ行く一軒家レストランみたいなのが今あって、予約取れないようなのが、藤野にもあるのかもしれないですけど、こういうのを誘致できるといいです。
これはもう海外の事例なんですけど、中谷美紀さんという女優が心を病んでインドを旅した時に行った本を読んだ中で、「アナンダー in the ヒマラヤ」ってリトリートセンター。山の奥の凄いところに籠って自分を取り戻すっていう。インドはヨガとかアーユルヴェーダーとかもあるんですけど、こんなのも藤野でいいんじゃないかなと思っていくつか事例を多く持ってきました。
高橋:ヨガとか座禅とかする場所もいらっしゃいますし、木質化に関してもなかなか難しいですが市の方でも津久井産材の活用を進めていこうという中で、今橋本駅とか相模原駅とかの再開発とかありますけど、もう少し木造のビルとか木造利用した方法論とか高められたらきっと面白い。
森:津久井産材については、以前と比べると少しずつ名前を積極的に打ち出す形で焼き印をしたり、木の良さを理解してもらうこともベースに、こんなことにも木を使えるんだな、と。モリモ研究所、わりと小物から形がついているものを含めて、津久井産材の良さを伝えるグッズを考えているということもあります。更には建築資材としてどれだけの供給量によるかも前提となりますけれど、良い形で津久井産材を多くの方に知ってもらう場面を積極的に作っていくことが今大きな課題というところです。
東浦:武田軍と北条軍のボードゲームをいただいて、やらせてもらったら面白くて、これをもっと巨大化したものを藤野でやってほしいな。
高橋:うまい下手じゃなくていろんなやり方ができてバリエーション増えそうです。リトリートみたいな話もしてもらいましたが、副市長の方でも癒しの構想があります。
森:それはキャンプ場をしたり、この自然環境をどう活かしていくかというと、元々自然環境を目指して移住してきている方も多くいらっしゃるわけですし、藤野についてはシュタイナー学園がなぜこの場に来たのかていうのは、廃校の活用というのはあるにせよ、子どもたちの学びと育ちの場としてはこの自然環境は魅力だったというところも大きくあったんだと思います。子供たちにとって良い環境が、大人たちにとっては悪い環境になってきて、多世代が混在した中で大きな価値を作っていくかということを考えていくと、豊かな自然環境というのは大きな縦軸として各年代を強めるものとしてあるのかなと。
そこの中で今度は利便性、いわゆる今まで言ってきた言葉として利便性をスローシティとの考えも含めてですね、どう見直していくかっていうのはこれからのまちづくりで大きな問題になってくる、と今日感じたところです。
高橋:最後に一言ずつまとめをいただけたら。
森:行政の役割について最後に少しだけ話をしておこうと思います。これまではどちらかというと、行政の動きは仮説検証型で動いてきたというところが多いと思うんです。そこを脱却しなければいけないなという部分があると思うんですよね。そのためにはデザイン思考をどういうふうに取り入れていくか、というところが職員に求められています。併せてバックキャスティングを、ちゃんと自分のスキルとして身につけていくことが必要です。そのことによって「なぜ?」という問いを自分の中に多く発することができるかどうかが職員としての能力に繋がってくると思うんです。その「なぜ?」問いを立てられることによって、その解決について、多くの方との繋がりを含めて多大な知見を取り組む中で、初めて解決って見出されてくるもので、今までのように仮設で検証するだけでは今の地域課題の解決は難しいと思うんですよね。それは幸せをどう確保していくかにも大きく繋がってくるはずで、ベースは市のサービスのユーザーである市民にとって、何が望ましいのかをしっかりと考えていく、その実現をバックキャスティングとデザイン思考織り交ぜながらやっていくことが必要です。そのことによって弱みも強みに転換できるし、強みと弱みの掛け合わせで更に強みにできると思っています。それが余生に重ねた課題かなというふうに思ってます。以上です。
高橋:森副市長ありがとうございました。東浦さんの方からも一言を。
東浦:昨日からお邪魔して古民家に泊めていただいて、美味しいものもいただいて、なんかすっかり藤野ファンになって、また来るかもしれないなと思ってるんです。もちろん日常生活されてる方だとか行政の方からすると、課題だらけに見えているかもしれないですけど、私は突然の訪問者として良い所ばかり見せていただいたと思うんで、いい面しか見えてないのかもしれないんですが、いわゆる日本どこにでもあるような里山中山間地域とは明らかに藤野は違うポジションにあるなって感じは、ヨイショではなくて本当にそう思いますね。やっぱりいろんなこと既に取り組まれていてかなり先端的で、これは間違ってないと思うんで突き進めばいいと思うんですよね。あとやっぱり財産の人が素晴らしい、いろんなバックグラウンド持った方が一つの価値観の中で一緒に住んでるっていうのは、なかなか作ろうと思っても作れる環境ではないので、基本的にはこれまでやられたことを信じてやっていかれればいいなと思うんです。
今、仮説検証の話をされたんですけど、企業もそうなんですけど、もうあまり過去に答えはないんですよ。コロナってことで世の中がひっくり返るくらい、グローバル環境がどうなっちゃうか全く一寸先が見えないので、多分過去の事例とか探しても成功事例って参考になら
ない。からバックキャスティングとおっしゃってましたが、相模原市は、藤野はこうありたいよね、これを目指そう、ってところから戻ってくるやり方が一番いいと思いますし、よくある転ばぬ先の杖で杖つきすぎてい倒しちゃうってあるんですけど、どっちかというと藤野のやり方は、まずやってみようぜみたいな、やってみてなにか問題があったらそこを改善していこうということで、やる前に「それはどうなんだ」ってできない理由を並べ立てる人がいっぱい世の中いるんですけど、まずやってみる精神でやったほうがいいと思いますし、意外と今の変化は激しいので、じっとしてるとどんどん遅れを取ってしまうと思うので、今私は藤野にとってチャンスが来てるんだと思いますので、ぜひ頑張ってやっていただいて新たな事例作っていただければなと思います。
高橋:ありがとうございます。本当に今回この森ラボにお越しいただいて見ていただきながらいろんなお話を伺いまして、移動からエネルギー問題、幸せと中山間地域のお話含めて、今後小さなトライアンドエラーをさらに繰り返して、かつこの議論、取り組みが地域全体に広がっていって、先ほど橋本とか都市部に山が近いので、ここの交流もさらに深めながら、ちちょっと面白いまちづくりになっていけばいいかなと思いますので、引き続き皆さんよろしくお願いできればと思います。本日は貴重なお時間ありがとうございました。