2021年10月21日(木)19:00-20:30
会場:森のイノベーションラボ FUJINO
ゲスト
傍嶋飛龍(画家・万華鏡作家・廃材エコヴィレッジゆるゆる村長)
武笠太郎(ザリガニワークス代表)
ファシリテーター:高橋靖典(森ラボ コミュニティマネージャー)
4回目の森ラボイベント。森ラボのコンセプトに「SDGs with ART」があり、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)をアートやクリエイティブな視点で取り組んでいきたいと考えています。そのコンセプトにも繋がる活動を行っている藤野在住のアーティスト、武笠太郎さんと傍嶋飛龍さんをお招きしてトークセッションを行いました。同じ多摩美術大学のご出身の武笠さんと傍嶋さん、ファシリテーターの高橋も合わせて年齢の近い3人で和気藹々とトークを繰り広げました。
ザリガニワークス 武笠太郎さん
6年前に藤野へ移住し、最近藤野の中でも特に山奥の篠原に引っ越しをされた武笠さん。「地域のものをガチャガチャで楽しく」するをテーマに、地産ガチャという活動をしています。
篠原には炭焼き部という、地元の炭焼き文化を継承するためのサークル活動があり、その炭をガチャガチャで売ろうということで始まった地産ガチャ。地元で農家と皮職人をされている方とコラボし猪鹿の革もガチャガチャに入れたりと、地元の資源を面白く、気軽に手に届く形にデザインする活動をされています。その他にも羊の毛、樹木のキーホルダー、割れた陶器、哲学カンバッチ、縄文土器の偽物等を藤野のお店や施設に限らず、町田コワーキングスペースや青山学院大学相模原キャンパスなどに設置しています。仕事柄PRも得意なことから、メディアへのプレスリリースも実施しているようです。現在開発中のガチャは、介護施設のおばあちゃんが描いた猫イラストの缶バッチとのこと。また、“くりえいと“という子供向け工作ワークショップを毎週開催する活動もされているようです。
廃材エコビレッジゆるゆる 傍嶋飛龍さん
20年前に、絵描きとして活躍していた時に“人工物がないところに行きたい“という思いで藤野に移住してきた傍嶋さん。移住当初は絵を描きながら地域のイベントの主催や音楽活動をしていましたが、8年前に綱子という限界集落に引っ越したことがきっかけで、廃工場となった鉄工所を買い取り、99.9%廃材で作る廃材エコビレッジ作りを始めました。8年間この廃材エコビレッジを作り続けている飛龍さんですが、廃材を循環させ、里山ならではの地域資源の活用しながらコミュニティーを作るという思いが根底にあるようです。藤野に移住してから、“人生はアートだ“と思うようになった飛龍さん。訪れた人が人生をアートするきっかけになるような場所になればという思いで場づくりの実践を続けています。ゆるゆるは登録制コミュニティとなっていて、現在680人が在籍しています。ジャンベ部、畑部、竹細工部などの部活動があったり、モバイルハウスに住んでいる人が集うプロジェクトが起こったり、お祭りが行われたりと、面白いコミュニティが育まれているようです。
トークセッションでは、アートとして社会活動としての側面から、お二人の活動に関してそれぞれのお考えを伺いました。
武笠:
アートをやっているというつもりはなかったが、販売することがコミニュケーションで結果として問題提起になっているところはある。値段がつくことで見るものがいつの間にか自分に関係してしまうという関係が面白い。悪戯を仕掛けているような感覚。全国で売っているガチャガチャは、99.9%くらい中国産で、プラスチック製品をコンテナで運ぶという、そうでないと成り立たないシステムになっている。それと真逆のことをやっているところはあるので、そっちの真逆の出発点からどこに行くのかっていうのを見てみたい。今他の地域から地産型ガチャの製造を依頼されているので、進めていきたい。
傍嶋:
自殺の少ない町には独特の空気があり同調圧力が少ないという話を読んだことがあり、そんな空気を持つコミュニティで作ることがアートだと思っている。人の心が変わるのはある意味世界が変わるようなことだと認識していて、コミュニティと関わる中でその人の中で何かが変容するのは、アートの力がそのコミュニティの中に存在していて、何かを触発していろんな人と関わるのかで何かが生まれていったらいいなと。ゆるゆるコミュニティーにも障害者手帳を持った人もいるが、そういう精神的な問題を抱えた人たちがどうやったら面白く混じることができるかというのを考えたり研究したりしています。みんながお互いに寛容になったり受け入れたりできる空気を作ること、ある種の空気のデザインっていうのは、繋がりやシェアしやすいというのはそういう人たちを受け入れるための土壌として空気としては大事だなと思っていて、そいういう空気が自然と作られるのはどうすればいいかということを考えています。そこで関わっていった先にその人が生きやすくなったり居心地が良くなったら、世界が変わったと言える現象かなと思いますね。認識が変わるというのはアートの力かなと思っていて、武笠さんのガチャとかも同じような認識であって、ガチャガチャを通してポップにやっている、悪戯として考えているというのが面白い。
お二人のお話を通して共通していたのは、今までテンプレートとして存在して与えられていた幸せの形を自分たちでアートや遊び心を通じて作っていこうという思いでした。目の前にある課題ばかりを見るのではなく、幸せな暮らしを楽しく追求していくことが大事なのではと考えさせられるお話でした。
イベントアーカイブをYouTubeで公開しました。