2021年9月16日(木)19:00-20:30
会場:森のイノベーションラボ FUJINO
定員(現地会場):15名
山崎勇貴(株式会社日相園 専務取締役、藤野商工会青年部、津久井JC副理事長)
稲木元昭(家業エイド CXマネージャー)
ファシリテーター:高橋靖典(森ラボ コミュニティマネージャー)
3回目の森ラボイベント。地域における大きな課題の一つである事業承継をテーマに、家業を持つ人が踏み出す一歩を支えるオンラインコミュニティ「家業エイド」を運営されている稲木元昭さんと、家業を継ぐことを決められた地域の事業者である株式会社日相園 専務取締役 山崎勇貴さんをお招きして、地域における事業の実態や課題を伺いました。
家業エイド 稲木元昭さん
ご自身も実家は家業を持つ稲木さん。今まで事業承継は考えていなかった中で、“継ぐ、継がないの二択ではない関わり方がある“という家業エイドのコンセプトに共感し家業エイドに関わるようになりました。同じ家業持ちの観点から、家業エイドメンバーをサポートしています。そんな稲木さんに、下記二点についてお話頂きました。
1. 事業承継の課題に対する、様々な立場の人の視点
日本企業のうち99.7%を占める中小企業ですが、経営者の平均年齢は年々増加し、2025年には70歳超の経営者245万人のうち半数超が後継者未定。その廃業で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があり全国的に深刻な問題だということ(中小企業白書データより)。事業承継の優先順位一位は親族(61%)ですが、同族承継の割合は減少していることから、家業エイドとして、承継される側である、事業者の子ども達に焦点を当てたアプローチを実施。2年間で30回以上のイベントを主催、500人以上の家業に関わる人たちへヒアリングし、様々な立場で家業と向き合っている方々の課題を抽出。その中で、困りごとを相談する場や同じ境遇の人と話す機会がない、継ぐ/継がないという二択以外の選択肢を模索しているがどうすればいいかわからない方が多いという課題があることがわかったそうです。
2. 家業エイドが提供する事業承継問題への解決方法
ヒアリングで抽出した課題から、家業エイドは家業で繋がる仲間と共に、“家業の課題解決や、家業を生かした新たな価値創造に向かって動き出すための場“を提供することを始めました。オンラインで日本全国のメンバー同士が繋がる場で、自己紹介や家業に関する相談をする仕組みを作ったようです。メンバー同士が繋がって生まれたコラボレーションとして、お互いの家業訪問や家業エイドのメンバーが家業の品を持ち寄るマルシェ等が企画される等、交流が生まれ、また、トークイベントや家業エイド女子会などを家業エイド事務局が企画運営しています。
家業エイドでは、20代、30代の若い方を中心に、様々な立場のメンバーが交流しており、オンラインの特性を生かし、地域を超えた交流、課題解決が生まれているとのこと。
参加メンバーの参加動機としては、家業をもつ人と繋がりたい、すでに家業を継がれていて、自分の経験を生かして参加メンバーをサポートしたいという声が多いようです。また、他業種の方同士が出会われ、共同でクラウドファンディングをするなど、様々な立場の方が繋がる場を提供することできっかけ作りをしているというお話が印象的でした。
株式会社日相園 山崎勇貴さん
現社長のご子息である専務取締役の山崎さん、高校卒業後は一度藤野を出られ、静岡の大学を卒業後、沼津のお寿司屋さんに就職されました。人が喜ぶ顔が見たいという思いでお寿司屋さんで働かれていた山崎さんですが、実家の家業である宿泊サービス業も人が喜ぶ顔を見ることができる仕事なのではないかと思ったことがきっかけで、20代半ばに藤野に戻り日相園 に就職されました。
藤野を出られた後、お父様からは、家業の後を継ぐことについては特に意見はなかったようですが、後にお父様には、自由には生きてほしいが後を継いでほしい思いがあったことをお母様経由で知られたようです。いま60代後半のお父様とは、後2,3年で承継する前提でお話をされているとのこと。
商工会青年部に所属されている山崎さん、地域の事業者の方々と話されている中で感じた事業の問題は雇用。同級生のうち、半分以上は進学、就職のタイミングで外に出て、藤野に戻ってくることが少ないい状況ですが、そのことが事業承継者が少ない直接的な原因であると共に、事業継続の課題となることで間接的にも事業承継の問題になっているようです。
また、地域が人口流出している中で、事業の将来性を鑑みて、子供に承継させたくないと思っている事業者も多い、また、継ぐことを迷っている方の理由としては、違うことをやりたい、華やかな世界に行きたいという方が多いというリアルな事業者の声も伺えました。
トークセッションでは、事業承継について、事業者間の繋がりをはじめとして、親子間のコミュニケーションの不足、地域の将来性への不安も足かせとなっていることがわかってきました。そのためには事業者間の繋がりの場創出、家業のデジタル化等の承継者が事業を継ぐ際にバックボーンを活かせる施策や血縁だけでない第三者承継の支援等、継承する側もされる側にも一歩踏み出すきっかけや安心材料を提供していける仕組み、事業単体のみでなく地域単位で活性化させていく仕組みが必要だと感じました。
イベントアーカイブをYouTubeで公開しました。