2022年7月21日(木)18:00-19:30 「はじめてのSDGs講座」
「相模原市みんなのSDGs推進課」の榎本幸二さんと、藤野電力やアフリカでの社会活動を実践されていて、SDGsパートナーでもある「NPO法人Class for Everyone」代表理事の高濱宏至さんをお招きしてのトークセッションです。
登壇者:榎本幸二(相模原市みんなのSDGs推進課)
高濱宏至(「NPO法人Class for Everyone」代表理事)2014年にフィリピンで大規模な停電を経験した後、藤野電力と出会いオフグリッド電源を作る面白さに目覚め、その後2016年に藤野に移住。本業は海外NGO「NPO法人Class for Everyone」の代表理事。現在はアフリカ各地の非電化地域の学校へオフグリッド電源の導入やワークショップとして電気を作る授業などを実施している。
ファシリテーター:高橋靖典(森ラボ コミュニティマネージャー)子どものシュタイナー学園の入学に伴い、藤野へ移住。トランジションタウン活動に参加し、地域通貨よろづ屋事務局や、藤野電力等の活動に携わる。新規事業開発やデジタルソリューションの提供を行うアーキタイプ株式会社代表の他、地域では、一般社団法人藤野エリアマネジメント代表理事、学校法人シュタイナー学園 理事長などを務める。
高橋:SDGsという単語はよく耳にすると思います。聞いたことがあるけども、結局何なんだろうという疑問もあるかと思います。今日は、相模原市のみんなのSDGs推進課の榎本幸二さん。それから藤野電力やアフリカでの社会活動を実践されていて、SDGsパートナーでもあるNPO法人Class for Everyoneの代表の高濱宏至さんにお越しいただいて、実際の状況をお伺いしながらですね、SDGsの取り組みをお伺いしたいと思います。
それでは、まずは相模原市のみんなのSDGs推進課の榎本幸二さんから、SDGsの基礎知識と、相模原市の取り組みについてお伺いしたいと思います。
榎本:それではまずSDGsの基本的な部分をお話をさせていただければと思います。
SDGsとは持続可能な開発目標のことです。国連サミットで国連加盟国が「2023アジェンダ」に合意し、「2023アジェンダ」に掲げられた達成すべき目標がSDGsつまり世界の共通目標です。
開発は便利で豊かな暮らしをするためのものです。その開発のおかげで、世の中便利になったという気がすごくするんですが、それは一部の話で、世界中には電気がない生活をしていたり、貧困の問題があったりでまだまだ不便な生活をしている人がいます。
もう一つが環境の問題です。特に地球温暖化の深刻な状況が問題視されており、相模原市も被害を受けました。開発で一部は便利に豊かになりましたが、持続可能な開発ではなかったと言えます。
環境や社会、経済に対して持続可能な開発をしていくことが重要なポイントです。便利さや経済的な豊かさのみを追求するのではなく、環境や社会に配慮し、限りある資源を保全し、将来に向けて便利で豊かな暮らしを送るための技術や製品を開発することが重要です。
もう一方の開発の話をしますと、SDGsは人間開発だと思います。
貧困や格差をなくすためには、教育やしっかり収入を得て働けるようになる人間の能力開発が必要になります。格差や貧困は、分断や争いを生みます。教育っていうことは、SDGsの中でもすごく大きなポイントになっています。
SDGsは、一つのゴールに絞れるもののではなくて、普通はかなりいろんなゴールが複雑に絡み合っています。
もう一つが意識改革と行動変容です。国同士が政府で取り組むだけじゃなくて、我々一人一人が取り組まないと、間に合わない段階にきているというような意味がSDGsには込められています。
近年、SDGsという言葉の認知度は以前より上がっています。経済面でも動いていまして、投資機関投資家が、環境や社会に配慮した企業に投資しようという動きがあります。
SDGsは未来を担う子供たちの世代のため、というイメージがあるかと思いますが、未来のためだけでなく、今を生きる人の幸福にも繋がっていくのです。
相模原市の取り組みも少しご紹介したいと思います。
大学生の食材支援は飢餓を防ぐという意味もありますし、捨てられてしまう食材をあちこちから集めて配ってます。
市役所の独自の取り組みだけでなく、普及啓発や連携体制の強化をしています。
わかりやすいホームページを作ったり、カードゲームで遊びながら学べるものを作ったり、子供を対象にSDGsを学べるツアーを企画しています。
SDGsパートナー制度や、SDGsプラットフォーム、パートナーズプロジェクトを作り、一緒にプロジェクトを進める仲間をマッチングしたり、掲示板で発信できるような場を作っています。また、プロジェクトメンバーの募集や情報発信などで協力を募っています。
高橋:相模原市でもさまざまな取り組みがされているのですね。それでは、続いて、SDGsに通じるNPO活動をされている高濱さんからお話を伺いたいと思います。
高濱:高濱宏至と申します。SDGsをどういうふうに事業に落とし込むかというところを簡単にご紹介できればと思います。「NPO法人Class for Everyone」の代表理事をしていて、藤野電力という活動もしています。
これまで、限界のない資本積み上げゲームがされてきました。経済を真ん中に置いた活動をしてきたことによって、例えば大量生産、そして大量消費をするような流れがあり、環境や命というものが軽視されてきました。全てがサービス化され、無料で得られるものが以前より少なくなったと言えます。また、役割分担をしたことで、作ったものを最後はどうやって捨てたらいいのかなど、最後まで責任をみられないようになっています。
理想的なのは一直線ではない円の経済であり、循環のある経済です。生活や事業を含めて、いかに循環型のものにしていくかということが重要になってきます。これをどうやって事業に落とし込むかを考えています。リユースを軸に、教育だったり、エネルギーだったり、まち作りであったり、気候変動、温暖化の防止ということに取り組むということをやってきました。
最初にリユースするものとして選んだのが、パソコンだったりとか、タブレット端末、スマートフォンです。こういったものが日本に大量に余ってるという事実をもとに、これをアジア、アフリカの子供たちの教育に活用するという活動を2012年、今から10年前に始めました。
世界では、30億人ぐらいはまだまだインターネットを使えなかったり、自由に使えない制限があるような生活をしています。こういったところにパソコンだったりとか、タブレット端末、スマートフォンを届けたいと考えました。特に教育においては、ICT環境を整えることで得られる利益が多いだろうと考えています。
現地でリサイクルを、やっている方々や団体と連携して、しっかりした形に引き取ってもらって、また再利用してもらうという流れで取り組んでいます。
最近は、オンライン教育に伴ってより需要が高まり、現地の国の教育長であったり、そういったところが予算をつけて、学校の教育ICTを呼び、評価表に整理するということを優先して始めました。
我々の役割が少なくなっていくことは、社会がより我々の望む方向に進んでいるということで、良しと捉えておりますので、実は今の事業は縮小傾向にあります。
次に注力してやってるのが、実はパソコンを使うために必要な電気の作り方、という教えを提供してやっております。
藤野電力は、自分たちの地域のエネルギーを自分たちで考えるということをモットーに、太陽光発電の方法を教えるワークショップっていうのも展開をしていたり、あとは住宅の中にDIY施工をやっているような団体です。
アフリカの子供たちに電気の作り方を教えられる教材を作ってですね、最近ワークショップをやるっていうことを始めました。
しかし、学校にソーラーパネルをおくと盗まれるので、必要な時にしまえるものを考案したのが移動型の電源モジュールです。
電気を作るということそのものが、日本においても需要があります。昨今の自然災害による停電という時代だったり、今で言えば、電力需要の逼迫で節電のお願いや停電であったり、電気が自由に使えなくなる可能性というのは非常に身近に感じる方が増えてきたというふうに思います。
私は全部、基本的にリユースというものを前提に考えています。
ソーラーパネルは、今は使われていないものを入手しているんですけれども、まずリユースすることによって、ゴミを減らすことができ、それによるCO2の排出も抑制できます。
リユースすることそのものをですね、環境教育という形で落とし込むことによって、人々に物の成り立ちを教えることができたりとか、DIYスキルを教えることができています。
藤野では、移動図書館もリユースしています。子供たちと一緒にペイントするっていう体験授業みたいなものも含めてイベントとしてやりました。
藤野町にも図書館はあるんですけども、車でなきゃいけないとかそういったところもありますし、特にコロナ禍においては、図書館そのものが使えない時期もありますので、そういった時期に子供たちが、そういう場所として使えるようにと思っています。
相模原市の方でも今問題となっているナラ枯れという現象がある中で、そういった木材をリユースする活動も行っています。
地元の炭窯でナラ枯れを炭化させて、その炭を使って蓄電池を作るということをやっています。ソーラーの方の事業でもこれを応用して使えるかなというふうに思っています。
持続可能な社会をつくる上で、重要だと思っていることがいくつかあります。
一つは、天岩戸方式と呼んでいて、理屈よりも楽しさ優先の方法が持続可能ではないかと考えています。
次に、まずは作ってみるということ。できるところから初めてみるということが、持続可能な開発には必要だと思います。
あとは、我々はですね、その作り方なんかも含めて、オープンソースとしてどんどん出す、共有することも持続可能な開発には必要だと思っています。
始まりから終わりまで回り続けるような事業モデルを考えることが大切であり、自分で修理できることが大切です。修理するための情報を、販売するときに一緒に載せる、とかですね。サービス化されているものの中で、これから公共財としてのコモンをいかに増やすかというところですね。
そして、「足るを知る」ことが大事だと思っています。
収入をどんどん伸ばしていくことがいいのではなく、自分たちの生活に必要なお金がいくらなのかとか、お金を使わなくてもできることはどのぐらいあるのか、ということをまず把握していくことです。必要なお金っていうのはもちろん稼がなきゃいけないとは思うんですけども、多く稼ぐことがいいことではないというふうに考えられれば、必要な分だけを短い時間で稼ぐっていう方法も作れるんですね。短い時間でお金を作り出すことができれば、残りの時間は自由に使えるわけですね。その自由な時間を使って、先ほどのコモンを増やしていったり、そういった活動に時間を使えるようになっていくというのが、これからの未来、豊かな社会をつくる一つの形ではないかと思います。
藤野にはそれを体現してる人がたくさんいます。そういったことを目指しながら、事業をしていく、これが振り返っては、永続可能な開発目標というものを実現するための事業に繋がっていくというふうに考えています。