2024年1月18日19時より森のイノベーションラボFUJINOにて、相模原赤十字病院 相模原赤十字訪問看護ステーション 看護師長の潮環さんを講師にお招きし、「訪問看護ステーションの取り組み」と題したイベントが開催されました。地域住民、自治体関係者、地域医療関係者、地域のシステム企業の方々といったさまざまな参加者と共に話が進みました。
潮さんは相模原赤十字病院 相模原赤十字訪問看護ステーションに勤められ、旧津久井郡(旧城山町、旧津久井町、旧相模湖町、旧藤野町)を対象に、長く訪問看護に取り組んでいる経験をお持ちです。潮さんは、終始優しい口調で、訪問看護ステーションの役割やご自身の体験について話されていました。
神奈川県相模原市緑区中野256に所在する相模原赤十字病院は、旧津久井郡では比較的大きな病院であり、一般病床を92床、地域包括ケア病床を40床有しています。災害拠点病院としての指定も受けており、2024年1月1日に発生した能登半島地震でも、医療スタッフを派遣しています。医療機関が少ない旧津久井郡において、相模原赤十字病院 相模原赤十字訪問看護ステーションは、地域住民の在宅における療養支援の一翼を担っています。
さて、「訪問看護ステーション」と聞いて、ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。それは、「疾病や障害の状態になって初めて利用するサービス」という側面があるからではないでしょうか。しかし、事前に訪問看護ステーションを含めた各種制度を知っておくことで、いざという時の選択肢も増えると思われます。
相模原赤十字訪問看護ステーションでは、旧津久井郡を対象に、24時間365日、介護相談、医療的ケア、精神的相談、身体的ケアと様々な対応を行われています。
「訪問看護ステーション」を、砕けた言葉で言えば、「患者さんの家に直接伺い、医師の指示のもと診療の補助や療養上の世話を行う」役割を担っています。
法律の規定により医師以外は医療行為をしてはいけない決まりになっていますが、「医師の指示」があれば、看護師でも「一定の診療の補助」が可能です。ここが介護との違いです。
それでは看護師が実施できる「一定の診療の補助」とはどういったものでしょうか。たとえば、褥瘡(床ずれ)の処置を例に考えてみましょう。褥瘡は、皮膚がベッド等に長時間接して圧迫されることで生じる皮膚の損傷を指します。そうした褥瘡の悪化を防ぐには、身体の位置を変える体位転換や感染防止のための抗菌薬投与等の処置を行うのが一般的です。こういった場合でも、医師の指示を受けた訪問看護ステーションの看護師は、抗菌薬投与の処置等が「一定の診療の補助」として可能となっています。
また、潮さんは、「訪問介護(ヘルパーさん)からの情報提供がとても助かる」と仰っていました。潮さんが挙げていたのは「患者さんの妻が最近よく怒るようになった」と訪問介護(ヘルパーさん)より情報を受け、医療機関また訪問看護へ繋いだという事例です。こうした介護と看護の連携も今後より一層重要になってくると思われます。
昨今は地域包括ケアの潮流のなか、厚生労働省も住み慣れた地域における療養を推進しているようです。24時間365日対応している訪問看護ステーションは、在宅での療養の際には強い味方になります。同時に中山間地域における訪問看護ステーションの運営は、旧津久井郡が広いことで、移動に時間を要する等の課題もあると潮さんは仰っていました。今後より一層高齢化が進む中山間地域においては、そうした課題に対応していく必要もあると感じました。
また質疑応答では、訪問看護ステーションと関係機関との情報共有といった課題も共有されました。潮さんも関係機関とのやりとりは「基本的に紙ベース」と仰っていましたが、業務の効率化には一層のデジタル化やフォーマットの標準化が必要という意見も出ていました。昨今、まだ医療や介護の領域にはデジタル化による情報共有に課題が残っており、改善が必要であることも改めて浮き彫りになりました。