ナラ枯れってなんだろう。
2021年夏。僕らが暮らす旧藤野町(現相模原市緑区の最北部)において、今までなかった自然現象が多発した。雑木が覆う山々に点々と赤く色づいた木々が見られたのだ。
季節はずれの紅葉だと思った人も多いかもしれないその現象。『ナラ枯れ』である。
かつて、というのは1970年代頃からのことだが西日本から全国にかけて、松枯れが大発生した。かろうじて経済林でもあったマツ林、そして各地で白砂青松と称された風雅な風致林も一変したのである。
その松枯れと同じように、ナラ枯れも、一気にナラを枯死に至らしめる樹病である。で一口にナラと書いているが、ブナ科の多くの樹種がその対象であり、特にこの藤野ではいわゆる「雑木林」の優占種あるコナラが一気に枯れてしまったのだ。すでに同じ神奈川県内であっても箱根や湘南では数年前から大きな問題になっていたのだが、ついに藤野にも、というちょっと危機感ある夏であった。
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身近な雑木林の優占種に一気にダメージが及ぶとなると、様々な不安が頭をよぎるのは当然のことである。景色が変わるだけではなく、大径木の枯死が、災害の原因にもなるのではないかという、不安さえかきたてられる。
一方で、悲しいかな、かつては人々が生きるための燃料源であり、現金を生み出す製炭の元本であり、と生活に密接に関わっていた雑木林は、今や四季移ろいの景観を楽しむばかりで、その木々が多少枯れたところで、何ら生活に変わりはないだろうという、楽観論も否定できない。
もちろん、実際にナラの薪で冬の暖をとる方も藤野では少なからず。いやいや、近年はかなり増加傾向にあるという、現実もある。はたして、実際に枯れてしまった木をどう処理するのが良いのかなども気になるところだ。
僕らがこの地にしっかり根を張り生きてゆくなら、このナラ枯れが広がり切る前に、その仕組や性格、一体何奴か、そして、どう付き合ってゆくのかを考えることは、とても大事なことになるだろう。
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さて、今回の会議では、はるばると京都からナラ枯れ対策の第一人者である小林正秀さんに登壇していただくこととなった。その肩書などは登壇者プロフィールを見ていただければよいかと思う。それはともかく、京都の美山という茅葺き集落に生まれ育ち、今なおそこで暮らすという点。その地の財産である栗栽培にとても力を入れてきた研究者であること。都市への人口集中を憂えること。さらに、ナラ枯れの深い理由も、温暖化などと関連付けて考える点など、藤野に暮らす人々との共通項も見逃せない方なのである。
さらに言えば、もちろん研究者なので、裏付けあっての話なのだが、その話には甘口から辛口、そして微妙な毒気まで織り交ぜられ、ついつい聞き入ってしまうのである。
というわけで、お時間のゆるす皆様、ぜひともご参加をいただきたい。(文・三宅岳)
【開催概要】
主催・企画:森ラボ・森の再生プロジェクト
日時:2022年1月25日(火)19時~22時00分
会場:森のイノベーションラボ FUJINO (神奈川県相模原市緑区小渕2012)/オンライン参加
定員(現地会場):15名(事前申し込み)
参加費:資料代としてドネーション受付(PayPayの送る・受け取る画面より”09044156100”と検索ください/目安500円~1000円。PayPayをご利用でない方はゆうちょ銀行の振込み先をお伝えしています。申し込み時にお知らせください。)
申込方法:参加をご希望の方は、morinosaisei@gmail.comよりお名前とご連絡先を記載してお申し込みください。事前にzoom講演の資料をお送りいたします。
zoom:https://us02web.zoom.us/j/82816398565
ミーティングID: 828 1639 8565
パスコード: 033815
【登壇者プロフィール】
小林正秀(こばやし・まさひで)
1966年生まれ、京都府出身。
南丹市美山町の築200年を迎える国指定重要文化財の家に生まれ、山で野遊びに親しむ幼少期を過ごす。京都府立大学農学部林学科卒業後、京都府林業試験場に就職。
2006~2014年、府立大学院の特別講師として招かれ、論文の指導をしながら現場で学生達とナラ枯れ除去にも取り組む。
ナラ枯れや獣害、マツ枯れ、竹林の拡大、休耕田の活用など『過疎が招いた山村の疲弊の解消』に一貫した研究と徹底した現場活動に取り組む。
過疎によって耕作放棄地が増加、耕作放棄地が獣の住処となって獣害を深刻化させて過疎を助長している。この悪循環を断ち切るため休耕田で魚介類を養殖している。育った魚介類(ドジョウやホンモロコ)を料亭に提供し、料亭から魚介類の餌(魚のアラや出し殻など)を提供してもらう資源循環の取り組みも注目を集めている。農学博士。日本森林学会、日本応用動物昆虫学会会員。
【ファシリテーター】
NPO法人ふじの里山くらぶ理事
井上進吾