
数年に渡り、継続的に人に寄りそうロボットの開発を続けているバリアフリープロジェクト。新たなロボットの開発が進んでいます。今回はその様子をレポートしたいと思います。
1)現在開発しているMVP:育成型AIコンパニオンロボット「MAGOO」
現在、MVP(Minimum Viable Product)として育成型AIコンパニオンロボット「MAGOO」を開発しています。MAGOOは、ユーザーとのコミュニケーションや日々のインタラクション(対話・触れ合い)を通じて、感情・知識・行動を学習しながら“成長”していく家庭用ロボットです。従来のペットロボットと異なるのは、生成AIや感情認識などの技術を活用し、個々のユーザーの生活リズムや好み、会話のクセに適応しながら、より親密なパートナーへと変化していく点です。主な用途は独居高齢者宅などでの日常支援であり、服薬リマインドやニュースの共有、日常的な雑談を通じて、利用者の生活をきめ細かくサポートすることを目的としています。 現在、プロダクトのβ版が完成しており、独居高齢者宅での実証実験を進めています。また、日々の開発を通じて、機能・体験の両面でアップデートを重ねています。
2)並行して進めている現場ヒアリング:介護・医療を支える技術の探索
本プロジェクトではロボット開発と並行して、「ロボットが介入することで、介護・医療現場がどう良くなり得るか」を一次情報から捉えるためのヒアリングを継続しています。狙いは、現場のオペレーションや判断の難所を具体的に理解し、テクノロジーが支援できる余地を見極めることです。特に今後の社会背景を踏まえ、高齢者の日常に加えて在宅医療(訪問診療)の文脈でも、ロボティクス/テクノロジーの適用可能性を検討しています。ただし目指すのは「医療者を置き換える」ことではなく、不足していく人的リソースを支え、医療者が本来注力すべき判断・ケアに集中できる環境をつくることです。
そのうえで、現場で発生するルーティン業務のうち、テクノロジーが支援できそうな余地としては、たとえば以下が考えられます(※診断・治療判断は医療者が担う前提です)。
- 体調変化の聞き取り(問診の補助、記録の下書き)
- 服薬・水分摂取・生活リズムのリマインド
- 連絡のトリアージ(緊急度に応じた家族/訪問看護/医療者への接続)
- 受診・通院の促し(状況に応じた行動提案)
今後は、こうした仮説を現場の実際の運用と照らし合わせながら、ロボットを通じた、支援の形を具体化していく方針です。
3)現場で得た最大の学び:「孤独」ではなく「孤立」という課題
現場を回る中で最も大きかったのは、自分自身の先入観が更新されたことです。これまで「高齢者=孤独」と捉えすぎていた面がありましたが、実際には友達との長電話や散歩などを通じて、ご本人なりに地域の中で関係性を築き、置かれた環境に適応しながら日々を過ごしている様子が強く印象に残りました。
一方でそこで見えてきた構造は、「孤独ではないが、孤立はしている」という状態です。特に深刻だと感じたのは次の点です。
『小さな体調変化(少し痛い、違和感がある等)が起きた際に、「この程度で在宅の医療者に連絡してよいのか」判断がつかないことがある→ 結果として我慢が積み上がり、相談が遅れるリスクが増加する』
訪問医療の担い手不足は現時点でも顕在で、今後さらに厳しくなる可能性がある → “人だけ”で支えるモデルには限界が来るため、人(医療者)×ロボット/テクノロジーのハイブリッドが有効ではないかという仮説に至りました。
また中山間地域である藤野では、移動手段の変化によって通院や買い物が難しくなる可能性があり、生活の“見えづらさ”が課題を深める恐れがあります。表面的には地域内のつながりがあっても、医療アクセスや受診判断の実態は外から見えにくい場面があります。その結果として、「ギリギリまで病院に行かず我慢する」といった状況が起きる可能性も示唆されました。「孤立によって助けが届きにくい瞬間」を減らすことが、今後の設計上の重要な論点だと捉えています。 引き続き、中山間地域における医療関係者(訪問医など)と連携しながら、現場の実態に即した形で、プロダクト開発を進めていく計画です。
今回のレポートは以上です。引き続き、バリアフリープロジェクトの挑戦を見守っていただけます様、よろしくお願いいたします。
