今回は、森のイノベーションラボFUJINOのバリアフリープロジェクトにて実施しているロボット開発レポートの第3回をお送りします。
晴れて試作が完成した「ハグボット」は、実証実験を実施します。2024年1月には、相模原市みんなのSDGs推進課のご担当者様のご協力もあり、SDGsパートナーでもある株式会社泉心会メディカルサービス様が運営している住宅型有料老人ホームにて実証実験を行わせていただくことが決まりました。医療政策に知見のある相模原市地域おこし協力隊員の相田を交え、実証実験の詳細を詰めるオンラインミーティングを経て、同年3月11日には実際に住宅型有料老人ホームを訪問し、実証実験を行いました。
まずは、施設管理者の方に対して、「ハグボット」の趣旨や機能の説明を行い、「介護者の視点」でフィードバックをいただきました。「監視カメラではなくロボットだと利用者の皆様の抵抗感が少ない」、「遠方にいるご家族が、リアルタイムで状況を把握できる上、しかも会話できるのは大きい」、「ハグボットは居室に置き、それをモニター越しに、まとめて見守りたい」等の声をいただきました。
そして、実際に入居者様のもとへ、「ハグボット」を持ち込み、実証実験を行いました。
特に印象的だったのは、入居者の皆様が「ハグボットにぬいぐるみやペットのような愛玩性を感じられていた」点です。入居者の皆様が、職員の方とタブレット端末越しに会話をしたり、ハグボットを抱っこをしたりしていくなかで、ロボット自体に愛らしさを見出して「もう行っちゃうの」や「かわいいね」といった言葉をかけていた姿です。それは「ハグボット」が目指していた世界観とマッチしていると感じました。
また、別日にお伺いしたSDGsパートナーのSICさがみはら産業創造センター内にあるコミュナルテクノロジーサービス社様には、「表面温度を高めることで温かみを出したり、ロボットをハグした時に何らかのリアクションがあったりすることが望ましいのではないか。」といったアドバイスをいただくことができました。
プロジェクトリーダーの篠部君は、「高度情報化社会のいま、効率化を求めすぎると誰にも頼らない社会になってしまう。ひとりで生きていける世の中に、あえてロボットを介して人との繋がりを作っていきたい」と語ります。それは従来、人間やロボットが追い求めてきた効率化のアンチテーゼとも受け取れます。
SDGsには「誰一人取り残さない」という原則があります。疾病や障害を有する方に対して、ロボットという手段を使い、「物理的なバリア」を解消するという取り組みは、SDGsの原則にも沿っており、一定の成果が残せたのではないかと思います。これからも継続してバリアフリープロジェクトに取り組んでいく予定です。
(本レポートの連載はこの第3回をもって終了します。)